草丛里的蝈蝈

SOMEWHERE IN TIME

二宮和也のIt「一途」第57回 無我

MORE 2013年09月号

無我

本連載が始まって、約5年になる。

25歳だったニノも、今年30歳。

激動の中、一途を歩み続けてきた。

節目となる今、一途に思うこととは?


取材・文/芳麗 撮影/江森康之

ヘア&メイク/服部幸雄 スタイリスト/伊賀大介(band)


容量が小さいままの自分で変わらず

生きていられるのは、仕事もプライベートも

みんなに支えられているから


🌲~

  ある晴れた日。都会の緑を見下ろすホテルのベランダで、気持ちよさそうな表情で話す。そのまま風にとけてしまいそうなほど、透明な空気をまとっていた。節目の年齢を目前に控えた、20代最後のインタビュー。「30歳に特別な意味なんで感じない。40歳も50歳も同じだと思う。(60歳で)赤いちゃんちゃんこ着たって、きっとなんとも思わないよ(笑)」


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 それでも、時の経過とともに、自分の内側では変わるものと変わらないものがあることは感じている。

 「もともと、若者らしい向上心とか野心はすごく薄かったけど、最近、ますます欲がなくなってきちゃった(笑)。洋服もここ数年、買った記憶がないし、アイドルの子とか見ても、ごく普通に『可愛いな』って思うだけ。あ、何もしなくても稼げたらいいなって欲はあるかな(笑)。日々、いろんな出会いがあって、自分も変化していくものだとは思いながらも、意外と変わらないもんだなって。我も薄いね。自分はもっとこうなりたい、こう見せたい! も皆無。でも、欲しいものやなりたい自分がないって、シンプルで生きるのがラクだよ。人前に出て自分を表現する---芸能の仕事をするうえでは我も欲もパワーになるってことは知ってるけどさ」


🌲~

 ニノの場合は反対だ。芸能の仕事を続けてきたからこそ、我も欲もますます薄くなっていった。

 「この仕事を続けていくうえで、基本、他人にどう思われてもかまわないんだよね。そもそも、“ホントの自分”なんてどうでもいいと思っているから。だって、芸能人は性格じゃなくて顔だもん。顔のよし悪しじゃないよ。だって、街を歩いている時、性格で気づかれることなんてないでしょ。顔で気づかれるわけで。テレビの中にいて顔を認識されれば、芸能人としての役割を果たしているのかなと」


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 つまり、芸能人の顔は“記号”のようなものだということ?

 「そういうこと。お茶の間は、いきなり芸能人の内面に興味を抱かない。テレビを見てて応援したいと思えば、初めて内面に目がいくだろうけど。普通は“テレビの中にある顔”でしかない。だから、“ホントの自分”を表現する必要はないし、そもそも自分が何者かなんて興味もなくなる。人前で仕事する時は、流れのままに楽しむだけだし。目の前で一緒に仕事する人に誤解されない“いい人”でいられればいいかなって思う」


🌲~

心の容量が小さいんだよね。だから、我も欲も薄い

 「オレが我も欲も薄いのは、心の容量が小さいからっていうのもある。受け入れられるものが少ないのね。ネガティブなんだろうね。好奇心とか冒険心もないから、新しいものに興味がわきづらい。だって、コーヒーを飲むのに何年かかったと思う?(笑)。ポジティブな人は飲んだことがないと飲んでみたい! と思うだろうけど。オレは、きっと黒くて苦いだけの飲み物だろうと思って飲まなかった。ここ数年、コーヒーが置いてある現場が多くて、結局、飲めるようになったけど(笑)。たぶん、嵐のほかのメンバーはもっとポジティブだろうなと。各々ネガティブな部分もあるだろうけど、オレみたいに容量が小さくないんじゃないかなって」


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 ニノの考え方はネガティブである以上に、儚さが漂っている。

 「すべてのものごとには、“終わり”があるし、“死”は必ず訪れるものだってことは意識している。たとえば、一生、嵐でいられるわけじゃないことは、自分たちも知ってるわけで。毎日、そんなことを考えて生きてるわけじゃないよ。ただ、心の片隅にはあって、それでも嵐が好きで、終わらせたくないから、今を生きてるんだなって。“死”のこともそう。心のどこかで思いながら日常を生きるしかない。未来はわからないけど、“死”によって気づけることは多いなと思う。たとえば、人との距離感。自分にとって、その人がどれくらいの距離かなんて、相手が死なないとわからないものじゃない? たとえば、オレが死んだら、その瞬間にその死を知る人もいれば、2年後に知る人もいる。死を知るまでの間、その人の心の中では、オレは生きていたわけで。なんだか、そのタイムラグがせつないなって。どれだけ心の中で大切に思ってくれていたとしても、お互いにとって現実の物理的な距離を知らされるのが、“死”なんだよね。そう思うと、やっぱり自分が持てるものは、小さい」


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 広い世界で国民的な人気を得ようとも、自分自身は小さくて狭い世界で生きていることを知っている。

 「こんなふうに変わらず、小さいままの自分で生きていられるのは、仕事もプライベートもみんなに支えられているから。流されるままに生きられるし、何もなくても幸せでいられるんだろうね。心から思うよ。だから、これからも自分の人生を自分でどうこうしようなんて思わない」


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Kazunari Ninomiya

1983年6月17日、東京都生まれ。嵐がメインバーソナリティーを務める「24時間テレビ」(日本テレビ系)は8月24〜25日放送。記念すべき誕生日の数日前に行われた取材。「祝われるのは若手」だと知りつつも、スタッフみんなでサプライズお祝い。撮影後、編集者がケーキを持って現れると、一瞬、笑いながらベランダに逃げるというイタズラ心を見せたものの、その後は最後まで、ちゃんと主役の笑顔でいてくれました








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